はじめに
ポケモン対戦の中でも、シングルバトルでは「じしん」はおなじみの強力な技です。
威力100で命中も安定、地面タイプなら誰でも覚える便利な全体攻撃――まさに“地面技の代名詞”といえるでしょう。
ですが、ダブルバトルの配信や動画を見ていると、じしんではなくじだんだが採用されていることが少なくありません。
同じように、水タイプの攻撃も なみのりではなくだくりゅうが優先される場面が多く見られます。
なぜダブルバトルではこうした技選択になるのでしょうか。まずはダブルバトルにおける「技の範囲」から整理していきましょう。
ダブルバトルにおける技の範囲
シングルバトルではあまり意識しませんが、ダブルバトルでは「どの範囲に攻撃が当たるか」が非常に重要です。大きく分けて以下の3種類があります。
- 単体技:相手1体だけを狙う(例:じだんだ、10まんボルト)
- 相手全体技:相手2体に同時に当たる(例:いわなだれ、だくりゅう)
- 全体技:相手だけでなく味方にも当たる(例:じしん、なみのり)
さらに、ダブルバトル特有の仕様として 相手全体に当たる技は威力が0.75倍になる というルールがあります。
例えばシングルバトルで威力100の「じしん」も、ダブルで相手2体に当てた場合は 実質威力75 になってしまうのです。
このため「全体に当たる技は便利だけど火力が落ちる」「味方にまで当たるとリスクが大きい」という点が、ダブルならではの技選択に直結しています。
技の基本性能をおさらい
次に、今回取り上げる「じしん」と「じだんだ」、そして「なみのり」と「だくりゅう」を比較してみましょう。
- じしん:威力100/命中100/全体攻撃(味方も巻き込む)
- じだんだ:威力75(直前の技が失敗していると威力150)/命中100/単体攻撃
じしんは高威力かつ安定した地面技ですが、「味方にも当たる」という大きなデメリットがあります。
一方、じだんだは単体対象で味方を巻き込まないため、安定した使いやすさが魅力です。
水技でも違いが見られます。
- なみのり:威力90/命中100/全体攻撃(味方も巻き込む)
- だくりゅう:威力90/命中85/相手全体攻撃(味方には当たらない/追加効果:命中率ダウン)
なみのりは味方を巻き込んでしまう一方で、だくりゅうは命中不安があるものの追加効果が強力で、採用されやすい傾向があります。
ダブル特有の味方を巻き込むリスク
ダブルバトルにおいて「じしん」や「なみのり」が使いにくい大きな理由のひとつが、味方をも攻撃してしまうリスクです。
例えば、隣にサポート役のポケモンがいるときにじしんを使ってしまうと、本来守りたい仲間を自分で倒してしまうことになりかねません。
特にトリックルーム始動役やサポート型のポケモンは耐久が低いことも多く、一発のじしんで倒れてしまえば戦術そのものが崩壊してしまいます。
また、ダブルバトルは試合のテンポが速いため、数的有利を失うと一気に不利になるケースも少なくありません。
味方を巻き込むリスクを避けることは、安定した立ち回りを実現する上で非常に重要なのです。
ワイドガードというメタ技の存在
ダブルバトルで全体技を使う上で、もうひとつ注意しなければならないのが ワイドガード という防御技の存在です。
ワイドガードはそのターン、味方全体 を相手全体技から守ることができます。
さらに重要なのは、ワイドガードは何回でも連続して使用できる という点です。
例えば「じしん」「なみのり」「いわなだれ」「だくりゅう」などの全体技は、相手がワイドガードを使い続ける限り、ずっと防がれ続けるリスクがあります。
一方で「じだんだ」のような単体技はワイドガードで防がれないため、安定した打点として扱いやすいというメリットがあります。
つまり、ダブル環境では 「味方を巻き込むリスク」+「ワイドガードで止められるリスク」 が重なり、全体技の評価は相対的に下がってしまうのです。
地団駄が評価される理由
ダブルバトルで「じだんだ」がよく採用される理由は、安定した打点と味方への安全性にあります。
- 味方を巻き込まない:隣にサポート役や低耐久の仲間がいても安心して攻撃できる
- 威力が安定している:基本威力75で命中安定、予想外の事故が少ない
- 追加効果の可能性:直前の技が失敗している場合、威力150に跳ね上がりフィニッシャーとしても活躍
全体技のリスクと比較すると、じだんだは戦術的に扱いやすく、安定感のある選択肢として高く評価されているのです。
では全体技よりも単体技の方が優先されるのか?
ここまでの話を読むと、「単体技が安全で有利」と思うかもしれません。しかし、基本的には全体技の方が強力であることも忘れてはいけません。
全体技の最大のメリットは、相手2匹に同時にダメージを与えられることです。
数的有利を作れるチャンスが高く、試合の流れを一気に変えられる場面も多くあります。だからこそ、ダブルバトルにはワイドガードという強力なメタ技が存在します。
しかし、全体技がワイドガードや味方巻き込みのリスクで防がれやすい場面もあります。
そのため、単体技も必ずしも不要ではなく、戦略に合わせて使い分けることが重要です。
場合によっては、地震と地団駄の両方を採用し、状況に応じて打ち分ける構築も見られます。
まとめ
ダブルバトルでは、シングルで強力な全体技である「じしん」や「なみのり」も、味方を巻き込むリスクやワイドガードによる無効化の可能性があるため、単体技が注目される場面があります。
しかし、基本的には全体技の方が強力です。相手2匹に同時にダメージを与えられるため、試合のテンポを有利に進められることが多いのです。
そのため、全体技を牽制するワイドガードが存在し、ダブルバトルならではの駆け引きが生まれています。
一方で、全体技が防がれたり味方を巻き込む可能性がある場合は、単体技が重要になります。
状況に応じて地震と地団駄を両方採用して使い分けるなど、技の選択はポケモンや戦術に合わせて柔軟に行うことが勝利の鍵です。
結論として、ダブルバトルでの技選択は 「強い技」よりも「強く使える技」 を基準に考えることが重要です。
全体技の制圧力と単体技の安定感、このバランスを意識することで、より戦略的で勝ちやすい構築を作ることができます。